
素敵なものを知っているあの人は、どんな手みやげを贈るのでしょうか?
手みやげを通して選ぶということ、そして贈るときに大切にしている思いについて聞いていく、連載『あの人の定番の手みやげ』。今回は、アーティストとして活動し、美術やフェミニズムについても積極的に発信する和田彩花さんにお話をうかがいました。

王德傳のお茶を選んだ理由を教えてください。
ここ数年、台湾には何度も訪れていて、とても親しみを感じている大切な場所です。私自身、台湾のお茶が大好きで毎朝飲んでいるので、親しい友達や仕事でお世話になっている方に台湾のお茶の魅力を知ってほしくて贈ることが多いです。
数ある台湾のお茶のブランドの中から『王德傳』のお茶を選んだのは、パッケージのデザインがとても良くて「映えるなぁ」と思って(笑)。台湾のお茶は茶葉だけを売っていることもあるんですけど、ここはティーパックでも売っているので、台湾のお茶にあまり馴染みのない人にも贈りやすく、視覚的なデザインの良さと使いやすさで選んでいます。
台湾のお茶の好きなところは、香りや後味がしっかりとしているところです。日本で市販されているウーロン茶って少し苦みがあると思うんですけど、初めて台湾でウーロン茶を飲んだ時にとても甘くてびっくりしました。香りもいいし、それでいてさっぱりしてて、季節を問わず楽しめます。
日本でお茶というと、静岡とか宇治などの「地域」を産地としてイメージすると思うんですけど、台湾のお茶は阿里山とか梨山といった「山」が産地なんですね。同じ産地であっても、標高や気候条件によって、味が味や香りが変わってくるのもおもしろいなと。
あと、台湾のお茶屋さんに行くと、いろんなお茶を淹れてくれるんですね。 まずは香りを味わって、その後にお茶を飲み比べする……この一連の時間を楽しむ伝統的なスタイルが好きで、時間をゆったりと使う文化が素敵だなと思います。すぐ近くの国なのに、日本茶とは味がまったく違うし、淹れ方も違う、そうした文化そのものに魅力を感じています。
普段、どんなことを考えて贈り物をしますか?
台湾に訪れたら、仕事でお世話になっている方たちには絶対にお茶を買っていくし、あとは友達のライブに行くときとかに持っていくことが多いですね。 記念日とかそういうかしこまった時ではなく、いつもの感謝を伝えたい、そういうタイミングで贈っています。
選ぶ時には、相手の好きな音楽だったりとか、日々どんなものを着てるのかとか、そういうところからヒントを得ています。なにを贈るのかを考える時間はとても楽しいものですよね。私は大切な人たちに食べたり飲んだりする時間に幸せを感じてもらいたいんだな、と思います。
一緒に仕事をする人たちは年上の方が多かったり、アートや音楽など、感覚やセンスが問われる場所で働いてる方が多いので、そういう人たちに台湾のお茶を贈ると喜んでもらえます。 人によって贈る茶葉を変えるのはもちろん、この人には以前これをあげたから、次はこれにしようという選び方ができるところもいいですね。
和田さんが受け取って素敵だなと感じた贈り物は?
ライブで日本各地に行くことが多いのですが、その地域の銘菓ってあるじゃないですか?そういうものをいただいた時は嬉しいですね。私は食べることがすごく好きなので、その地域にしかない美味しいものに出会えた瞬間に喜びを感じます。中学生の頃に、コンサートで差し入れしてもらった大阪のケーキ屋さんのクッキーがめちゃくちゃ美味しくて感動したのですが、その頃からこうした気持ちが芽生えたのかもしれません。
私自身、いろんな地域の銘菓を探すのが大好きです。その土地の独自性というか、その土地だからこそつくられるものに惹かれます。最近だと、愛媛の『一六タルト』がとても美味しかったですね。愛媛に訪れたら、街中にたくさん看板があったので「きっとこれは美味しいものに違いない!」と確信しました。
私はなぜか昔から、「誰かの大切な時間を自分がつくりたい」という勝手な思いがあります。自分で足を運んで見つけた発見だったり、そこで感じた美味しいという気持ち、そうした経験を通して自分の中で「好き!」と認識されたものを贈りたい。口に入れた瞬間に多くのことを感じるものだからこそ、その時間が最高に幸せなものになってほしいし、そのために日々いろんなものを食べるというところがありますね(笑)。
和田彩花(わだ・あやか)
1994年8月1日生まれ、群馬県出身。2019年ハロー!プロジェクト、アンジュルムを卒業。アイドルグループでの活動経験を通して、フェミニズム、ジェンダーの視点からアイドルについて、アイドルの労働問題について発信する。オルタナポップバンド「和田彩花とオムニバス」、ダブ・アンビエンスのアブストラクトバンド「L O L O E T」にて作詞、歌、朗読等を担当する。実践女子大学大学院博士前期課程美術史学 修了、美術館や展覧会について執筆、メディア出演する。